チバイチ : 2日目(野島崎)
千葉一周600kmの旅の2日目は、館山から出発して洲崎、野島崎、鴨川、勝浦、一宮を経て茂原まで150kmくらい走った。当初の予定では勝浦までの100kmくらいに留めておくつもりだったのだが、勝浦周辺では安い宿が見つからなかったので、茂原まで足を延ばすことになった。
洲崎
館山を出て東に走り、洲崎に向かった。途中の道は休暇村やら企業や大学の研修所やらがあって、リゾート地っぽい感じだ。研修をリゾート地でやるという、建前と本音の二重構造を堂々と宣言している感じが日本的で良いな。たまたま足を止めた鉈切神社というところに洞穴があるらしいので見に行ってみたが、単なる岩の凹みだった。神社自体は鬱蒼としていて良かった。
広義の東京湾は、房総半島の洲崎と三浦半島の剱崎を結んだ線よりも北側ということになる。したがって、この洲崎こそが東京湾の入り口だ。灯台からは、東京湾側には三浦半島が見え、太平洋側には大島が遠くに見えて、300度くらいの海のパノラマが見られる。
洲崎灯台の近くには、石橋山の戦いで敗れた源頼朝が落ち延びて再起を誓ったという洲崎神社がある。ここの眺めも結構いい。朝っぱらから自転車以外で脚を酷使した甲斐があった。
野島崎
洲崎を過ぎると、見慣れた東京湾も三浦半島ももう見えない。代わりに広がるのは、ひたすら青く続く太平洋の水平線だ。のんびり釣りしているオジサン達や颯爽と走り抜けていくライダー達を眺めつつ、ひたすら自転車を漕いだ。黒潮から来る生暖かい南風を受けるが、幸にして追い風気味なので結構楽に進めた。この道は房総フラワーラインと行って春先には菜の花の中を走ることができるのだが、既に季節が終わっていて、草刈りの作業員達が草刈りなどの後処理をしていた。そう、誰かが世話をしているからこそ花が見られるのだ。
房総半島の最南端は南房総国定公園なのだが、とにかく岩の景色である。それを抜けると、野島崎灯台が見えて来る。灯台は400円で登れるのだが、海しか見えないことが分かりきってるから割愛。岩場の方まで歩いて行くと岩場にベンチがあって、そこで海風を浴びながら一休みするのは爽快だった。
白浜・鴨川・勝浦
海はもうお腹いっぱいになりつつあるのだが、しばらくは海沿いの128号をひたすら北東に進んだ。途中に和田白浜館山サイクリングロードというのがあったので入ってみたのだが、これがなかなか曲者だ。田舎のサイクリングロードではよくあることだが、メンテに金が回っていないので舗装状態が良くない。凸凹を踏む度に尻にダメージが蓄積されていく。特に小径車は衝撃を緩和しないので尚更だ。これだったら一般道を走った方が遥かに早く楽に走れるが、でも海沿いの景色も捨てがたいし、悩みどころだ。結局尻を痛めつつサイクリングロードを走りきったけども。
鴨川付近について知っていることは鴨川シーワールドがあることくらいだが、和田浦やら江見やらの道中の風景はいい感じだった。一旦栄えてから寂れた街の物悲しさはなく、昔からこんな感じなんだろうという安定感がある。どの中核都市からも遠い陸の孤島みたいな立地なのにこれだけ家があるので、結構住み良いところなのかもしれない。
鴨川と勝浦付近は、千葉なのにやたら坂が多くて疲れた。昔子連れで来たこともある海中公園の前で一休みしていたら、知らないおじさんに声をかけられて、「ブロンプトンでずいぶん長い距離走ってますよね」と言われた。野島崎で見掛けられてから何度か車で追い越して覚えていたらしい。意外に見られているもんだな。ブロンプトンはできる子なのだと皆に伝えたい。
一宮
一宮まで来ると、長大なる九十九里浜の始まりだ。その南端である釣ヶ崎海岸はオリンピックのサーフィンの会場だ。ここは以前の九十九里浜サイクリングで訪れたことがあるので、ちょっと懐かしい。その先には、九十九里一宮大原自転車道なるサイクリングロードがある。ここの整備状況は比較的良かった。
一宮海岸で日が暮れるまで休憩してKindleで読書した。私は夏場は海岸で読書するのが好きだ。なぜなら、風が涼しいし、蚊がいないからだ。蚊の幼虫は海水では育たないので、当然海にはいない。そして海風が一定以上の強さであれば、対気速度に対抗しないとホバリングできないのではエネルギー効率が悪いため、蚊は生活できない。なので、海岸沿いで日陰をうまく見つけられると、そこは絶好の読書場所になる。そこで夕暮れまで過ごした。
茂原
茂原は内陸部にちょっと走ったところにあるのだが、快活クラブがそこにあるのでわざわざ寄った。なお、一宮で読書して時間を潰したのは、快活クラブに19時くらいにチェックインすると、朝まで居ても12時間パックで済んでちょうど良いからだ。快活クラブで最もコスパが良いのは20時以降にチェックインすると成立するナイトパックなのだが、多くの店舗では8時間しかカバーされず、それでは休息が足りない。一部の店舗では12時間カバーされるナイトパックもあり、その場合はなるべくナイトパックを使うべきだが、そうでない場合には12時間パックが良い。12時間以内に出れば12時間パックになり、ちょっと過ぎてもその分の時間料金が加算されるだけなので、あまり細かいことは考えなくて良い。入店してシャワー浴びて、ついでに洗濯して、干しながら漫画読んで、眠くなったら寝る。これ最高。実家。
二日目の総評としては、房総半島の海の景色を堪能した一日であった。150kmという長い距離を走った割には、そんなに疲れなかった。これは風向きの影響が大きいと思う。逆風だったらめちゃつらかっただろう。やっぱ海の近くに住みたいなという気持ちを新たにした。房総半島と三浦半島を比べて思うのは、前者の方が南国っぽいことだ。黒潮が風を温めるからというのもあるし、海も陸地も広いからというのもあるかもしれない。距離感としては、房総半島は車やオートバイがないと住めない感じだ。自転車では広すぎて隣の集落に行くだけで疲れてしまうだろう。三浦なら自転車でギリギリなんとかいけるかな。